関口 寿/ガリレオワークス, マイナビニュース, 2013-2-1.(リンクはこちらから。たぶん有限)

「スマホの仕組みはよくわからない」という人にも、科学の最先端に興味を持ってもらうとか、細かい話は置いといても身近に感じてもらうというのは、非常に重要なことだ。例えば、そういう経験で進路を科学技術系に進路を決める子供もいるかもしれない。私なんかはそういうことや、伯父が無茶苦茶厳しかったり、実際に仕事してるところを見たことで、少なくとも「選択肢ってのは広いもんだ」と実感した。

さて、そんなで、科学の最先端と普通の人をつなぐ仕事は絶対に必要で、しかもその仕事はとても重要なものだ。

さて、そこでタイトルになってる記事。とっても問題がある。

問題1: なんでこういう書き方を… (1/2)
「見えない線、存在しない点」のところに、次のようにある。

球の表面積は半径×半径×π(パイ)×4で求められ

普通、球の表面積は4πr2(肩付き文字もベタで書く場合、そういう正書法は無いけど、4πr^2って書き方が一般的)なので、内容自体には間違いはない。問題は見た目。r^2は、HTMLの問題もあろうからとりあえず触れないでおく(正確には半径×半径という書き方は、特別な意図がない限り間違いである)。問題は半径と、πと、4の並び。普通、数学でも物理学でも、大雑把な話、慣習として、定数から変数へという順番で書くことになっている。

それをなぜ逆順で書いているのか?その理由としてはいくつか可能性がある。関口という人がその慣習を知らずに書いているのか?そうだとしたら、関口さんはこういう仕事に向いていない。向いていないと言うよりも、やめなければ害にしかならない。もし、高校までの教科書でもこういう順番で書いてあるのだとしたら、すぐさま教科書会社はその並びを直さなければいけない。「間違い」を教えているからだ。

問題2: なんでこういう書き方を…(2/2)
「体積のない球」では、次のように書いてある。

半径の3乗×π×3分の4

さて、上に書いたものがそのままここでも言える。加えて「3分の4」という書き方がある。「3分の4」はあくまで読み方だ。文字としては普通は書かないし、数式の中では書いてはいけない。文字コードUTF-8には「3分の4」に対応する見た目があったかもしれないが、とりあえずそれは今のところ置いておこう。そうすると、「4/3」と書かねばならない。で、この式を普通に書くと4/3πr^3となるが、πr^3を4にかけるのか3にかけるのかを明示的に書きたければ(4/3)πr^3と書けばいい。

こう書いている理由は表面積と同じだろう。いずれにせよ、おかしいことに気づいていないのだ。

さて、積分あたりの説明にも怪しいところはあるのかもしれないが、その辺りは飛ばしとく。ここに指摘する3点だけで脱力が半端ではなく、積分のあたりまで確認する気力が失せたからだ。だが、次の3点めだけは指摘しなければならない。

問題3 円周率
実のところ、コレに比べると、上に書いた2つの公式は内容は間違っていないから、充分に気にしては欲しいところではあるが、まぁ、それほど気にしなくていい。テストで上の例のように書いても間違いにはならない。もっとも、採点時にあまり気にせず、文字列の印象が違う事により、一旦不正解にされるかもしれない。だが、先生のところに持っていけば正解になるレベルだ。だが、円周率についての記述は酷い。

「見えない線、存在しない点」の表面積の公式の後ろにこうある。

円周率πはおよその数だが×4は概数ではない

まず、「×4は」という書き方も相当ひどい。「×4」という値は存在しない。「4」と書かなければ間違いだ。だがこれは置いておく。

それよりなにより、円周率については酷い。あまりに酷い。高等教育を受けた人間が口にしていい言葉ではない。このようなことを口にする人は、絶対に関口さんのような仕事についてはいけない。正直、小学校からやりなおした方がいい。

なぜなら、πは無理数であり無限桁を持つ数値だが、円周率と書いても、πと書いても、そう書いた時点ではその3文字か1文字で、無限桁が書かれているのと同じなのだ。つまり「円周率πはおよその数」などではないのだ。なぜ、こんな勘違いをするのか、まったく理解できない。非常に根本的なところを理解していないとしか思えない。補足するならば、円周率やπは無限桁の数についた名前、あるいは円における半径と円周の関係についた名前と理解すればいい。どっちの理解でも「およその数」という理解よりははるかに正しい。「およその数」がブラックホールに吸い込まれてバラバラになってるとすれば、この2例はどちらもすくなくとも事象の地平よりはこっち側にある。

この段落を追記(16:26): ちなみに、無限桁の数値を有限桁で書くということ自体を不思議に思うかもしれない。有理数での話になるが、0.3333...(3が無限に続く)は、普通1/3と書く。そして両者の値は完全に一致する。無限桁の数値を有限桁の書き方で書くこと自体は、別に特殊ではないのだ。πの場合は有理数の形でもなく、名前で書くというだけだ。なお、比較的最近の電卓は、値が有理数であれば、有理数の形のまま計算してくれるものも珍しくない。条件が揃って、計算にバグがなければ、その分正確な計算が可能だ。ありがたい。

なお、実際にπを計算に使う場合は、計算機(電卓でもコンピュータでも)に無限桁を記憶させることはできないし、そんなことをしたって無駄なので、必要な桁数だけ覚えさせといて計算する。この場合は、「およその数」である。

さて、これらの例を見るだけで、関口さんの理系に関する知識ないし理解は、おそらくよくて小学生レベルと思われる。小学生に、科学技術や数学の解説をさせようという人が普通いるだろうか。タイトルの記事は、ライブドア・ニュースでの配信だが、元記事はマイナビのようだ。マイナビの担当者には、再度関口さんの経歴及び実力を精査されることをお勧めする。

更には、マイナビに登録している学生は、「円周率πはおよその数」と書く人の記事を鵜呑みにしてはいけない。何より、「円周率πはおよその数」などのような事を就活の場で言ってはいけない。小学校の数学が分かる人が面接官にいたら、墓穴を掘ってしまうからだ。あぁ、「書いてあることは本当か?」を確認するための例題として使うのはありだと思う。