詳しい事情は知りません。そういう前提で読んでください。

何となくですけど、「閉架」という言葉とかシステムが知られていないとか誤解されているというのがそもそもの発端のように思えます。いまどきの小学生の親が、閉架というものを知らないというのも考えにくいような気もするのですが。

実際の管理上の分類がどうなっているのかは知りません。あくまで図書館の利用者としての知識しかありません。(国際やら日本やらの十進分類法とかありますが、利用者としては今どきどれくらい役に立つかなぁ…)

で、図書館や図書室に入って普通に目にする本棚があります。この類を「開架(あるいは開架書庫)」と言います。それに対して、移動式の書架を使って、書庫の中の一列というかなんというか(二列とかの場合もあります)のスペースだけ開けて、そこに入って本を取ってくるような書庫があります。移動式の書架というは、ハンドルを回す手動式とかもあれば、ボタンで操作する電動式のもあります。例えば一列というか一人入れるだけのスペースを開けて、それ以外は移動式の書架がびっしりという感じです。そういうのを「閉架(あるいは閉架書庫)」と言います。実際の所、小学校の閉架というのは、もしかしたらダンボールに入っている状態かもしれません。要は、閉架というのは、開架よりも高い密度で本を置いておく方式です。ダンボールの場合はともかく、移動式書架だと、そもそも利用者が勝手にひょいひょい入れる状態だと、利用者自身にとって危険な場合もあるため、司書さんとかに申し出ないと入れないこともあります。

えーと、もし、この段階で「閉架って知らなかった」という人は、近くの図書館に行って、教えてもらってください。

さて、「小学校の閉架というのは、もしかしたらダンボールに入っている状態かもしれません。」と書きました。そう書くと、「結局利用者は見れないじゃないか」という話も出てくるかもしれません。そこで問題になるのが、「ある図書が、その図書館なり図書室の管理下にあるかどうか」です。その図書館なり図書室の管理下にある場合、基本的には検索カードや、今だったらPCでの蔵書検索システムで検索できます。ここで「基本的に」と書きましたが、例外になるのは大学の図書館だったら概ね修士論文くらいのものです(さらに別の場合をちょっと下で書きます。なお、学部の卒業論文は、そもそも図書館の管理下に入らない方が普通です)。ですが、修士論文だと、何年のどの学部のどの学科の誰のという情報を、そもそもどっかから入手できるので、何年のとかの情報に基いて、閉架の中を探せます(そもそも自分のいる大学だったら、指導した先生のところにいけば済むだけです。先生が別の大学に移ったとかいう場合に図書館のお世話になるわけです)。

で、検索カードや検索システムで見つからない場合はどういうことなのかというと、それはそのまま「管理下にない」という状況なのが普通です。管理下にないということは、捨てたか売ったか別の何処かに移管した(譲ったとか)という事になります(図書館が蔵書を売ることがあるのかと思われるかもしれませんが、あります。例えばの話、amazon.comあたりで古本を買うと、大学の図書館の蔵書印が押された本が手に入ることもあります(蔵書印の近くに廃棄などの印が多分あります)。もちろん、amazon.comでは、そういうのを狙って買える訳ではありませんが)。

もし、今回の騒動で、「閉架に移し」、かつ「検索もできない」という状態であったとしたら、問題です。実際に物があるかどうか以前に、「自分のところの蔵書を管理できていない」という状態になるからです(「管理」というと堅苦しいかもしれません。紛失していても良いんです。「紛失している」ということを管理できていれば)。あるいは、一般利用者用の検索システム等では引っかからないが、司書さんとかのアカウントで利用すると見つかるという場合もあります。これは、図書館としては微妙にアウトかなという気もしますが、そういう例が無いわけでもないです(いまどきは蔵書管理はPCでやるでしょうから、いろいろとそういう例も少なくなっているか無くなっていると思いますが)。特殊な本など、主に保護のために管理しているようなのはこういう場合も無いわけではありません。そういうのも、上で書いた修士論文みたいに、どっかから情報を入手できるものです。何にせよ、閉架の場合と同様、司書さんに申し出て見せてもらうような類ですね。そういう資料が検索システム上で普通に表示されても、なんらかの注意書きが表示されるはずです。

さて、検索できないという状態だったら、問題がある場合もあるわけですが、本当に「閉架に置いた」という状態だったら、今回の騒動はどういう様相を呈してくるでしょうか?(そもそも閲覧・貸出の制限という話も出てますが、状況がよくわからないので、ここでは無視します。なお、単に学年によって区切るということであれば、ちょい下で書く「図書室の利用のしかた」の、どの段階をどの学年で教えるかという問題になると思います。)

まず、「保護者とかが閉架というものを知らなかった」という場合がありえます。えー、これは結構大きな問題です。いまどきの小学生の親の半分くらいは大卒ですよね。それで、知らなかったとしたら、ちょっと…

あるいは、「小学校で図書館や図書室というシステムの利用の仕方を教えていないので、児童が図書へのアクセス方法を知らない」という場合がありえます。これは非常に大きな問題です。図書室があるのに使い方を教えないというだけで矛盾してますよね。私の場合ですが、小学校の3年生か4年生から図書室の利用ができました(んー、ちょっと特例で図書室に2回ほど入れてもらったのが2年生だったと思うので、3年生からだったと思うのだけれど、自信がありません)。で、利用可能になる際、全員が図書室の使い方を教わりました。「置いてある本はここに書いてあるよ(検索カードでしたね)」とか、「見つからなかったら図書室の人に聞いてね」とか、「禁帯出と書いてある本は借り出せないよ」とか、「静かにしましょう」とか、いろいろと。まぁ実際に閉架書庫を見るのは、自治体の大きな図書館か、大学に入ってからでしょうけど。「閉架」がその図書室にあるのであれば、システム上そういうものがあることは教えていないとおかしいわけです。

さらに恐ろしい可能性として、「教育委員やらなんやらとか、教員が、閉架というものをしらなかった」という場合も有り得ます。つまり、開架には置いとかないで、閉架とやら(だが、それが何なのか知らない)に置いといて、とりあえず児童の目に触れないようにすればいいとか考えていたという場合ですね。あぁ、恐ろしくてこれ以上書けない。

まぁ、「はだしのゲン」というものの存在も知られたし、「閉架」というものの存在も知られたであろうということで、結果としてはまぁ良かったのかもと思わないでもありません。